2022年08月25日

「声の道を知る」

8月9日に楽しみにしていた研修を受けてきました。児童文学作家であり現在ノートルダム清心女子大学教授の村中李衣先生の「保育に生かす絵本の世界」という講義です。

村中先生は私の学生時代の恩師で、絵本について、また保育について学び、仕事をするきっかけを作ってくださいました。講義を受けるのはなんと28年ぶり。当時は文学部での学びでしたが、今回は「保育に生かす」というところで、絵本でコミュニケーションをとりながら、より保育を豊かにしていく、実践的な内容を学ぶことができました。

その中で、とても印象に残るワークショップをひとつご紹介したいと思います。それは、「声の道を知る」というものです。

まず、ペアを作って少し離れて向かい合います。目を閉じている相手に四方八方に向けて、同じ声の大きさ、同じ声のトーンで、ペアの相手の名前を呼びます。その中で1回だけ、相手の正面、胸あたりに向けて声を届けます。呼ばれた人は声が胸に届いた、と感じたときに手を上げます。交代で呼ぶ人、呼ばれる人をやってみます。

ワークショップをやってみる前は「難しそう」と思ったのですが、実際にやってみると、思った以上に声の道が見えました。しかも、感じ取った声の道を相手に伝えるとき、そして、相手が感じとった自分の声の道を確認する時、とてもうれしい気持ちになりました。相手は「聞いている」だけなのに、無かに私の声が「見える」のです。ブログを読んでくださっているみなさんも、是非、ためしてみてください。

日常場面でも、絵本を読む場面でも、相手の胸に届くのかを見届ける姿勢を持つ意識は心に伝わるということなのです。絵本の知識や読む技術は必要ですが、「絵本はこう読むべき」という技術の前に心の耳を育て、見えない世界と対話できる身体性を身につけていくことが絵本読みの学びのスタートラインなんですね。

 

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